テレビ美術は舞台美術や映画美術と共通要素が多い。
しかしドラマやバラエティ、ショウ番組等の他にニュース番組やワイド番組など社会性に直結した情報を提供するという意味で、舞台や映画とは大きく違う。そういう意味でテレビにおいての大道具美術(装置)は実に間口の広い仕事となっている。

テレビ放送が始まって半世紀以上が経つが、テレビ放送発足当時は録画システムも無く白黒で生放送であった。すべてがリアルタイムで進行した。故に素材も紙や木材が主体で、当時は加工しやすいものが多く使われていた。当初は装置デザイナーや大道具スタッフは舞台や映画の美術関係者が多く、テレビ専門スタッフはまだ確立されてはいなかった。テレビ局の美術装置の計測は現在も尺貫法が使われてるが、これも舞台からの流れである。

その後、テレビはカラー化され、録画システムも確立されるなど高度な技術とともに大道具美術も大きな変化を遂げてきた。それまでモノトーンだった大道具装置もテレビのカラー化とともによりリアルで、ビジュアル面に於いても、質感的要素を要求されるようになる。また、録画が可能となって時間の制約がなくなりデザインも大きく変わった。

また撮影機材の進化によって、テレビ美術にも新たな素材が要求されるようになってきた。鉄骨やプラスチックなどは勿論、硬化性樹脂、発泡スチロール等新素材がどんどん使われるようになってきている。その為、大道具美術装置にはかなりの予算が必要になった。
予算節約の為ユニットセットというものが考案された。ユニットセットの登場により、時間の短縮と予算の節約が可能になった。
現在はコンピュータグラフィックス(CG)を駆使したバーチャルスタジオも現れ、テレビ美術の世界も大きく変貌した。

今後、スタジオ機材の更なる進歩やカメラの小型化などにより、大道具美術装置もよりダイナミックでよりリアルなデザインが要求される来ている。地上波デジタル化から始まって、ハイビジョン化となり、4K、8Kとよりリアルな映像が可能となり、映像美術のより高度な技術と多様性が要求されてきている。
テレビ美術を取り巻く環境はますます変化することが予想される。