舞台デザインのプロセス

●台本を読む

演劇においての舞台美術創作にあたり、 まず台本を読むところから始まります。
台本に書かれてる台詞、ト書きに書かれてる指定条件、役者の出入りなど芝居のテーマや流れを 読むことによって美術装置のイメージをつかんでいきます。

●演出家との打合わせ

演出家との打合わせをします。 演出家によって同じ芝居でもそれぞれ独自の構想で演出します。演出上の意図、 テーマ、イメージ、条件を綿密に打合わせをします。
リアリステックな装置で演出する人もあれば、オブジェ的なイメージの舞台を演出するときも あります。演出家の考えによってよって舞台装置もいろいろ変わってきます。

●具体的構想

舞台装置のデザインを具体的に持っていくために、 デザイナーは上演される芝居のイメージに関する資料を集めていきます。
舞台美術デザイナーは日頃からいろんな舞台の資料をスクラップしてます。豊富なそうした資料が、 ひとつのイメージを作り上げていくヒントになるからです。
舞台美術家は普段からいろんなものを見たり、聞いたりすることによって想像力を豊富にします。 ある程度の構想がとまったらラフスケッチを描いていきます。イメージを絵にすることによって情景、 雰囲気がよく解ります。また演出家や役者にも舞台装置のイメージの参考にしてもらいます。

●劇場を見る

舞台美術家は実際に上演される劇場を見ます。劇場の構造、 舞台の広さ、空間や設備などまた劇場の搬入口の大きさも必ず調べておく必要があります。 搬入口に収まらないセットではどうしようもありません。劇場の特徴を調べて舞台装置がどういう デザインならばいいか、実際自分の目で確認します。
また劇場の平面図や断面図はセットのデザイン、寸法などに必ず必要となります。

●ミニチュア模型

舞台の平面図を見ながら舞台装置のミニチュア模型を造ります。 装置のミニチュア模型を造ることによって装置がより具体的になります。
演出家をはじめ役者、照明家、音響家の人たちに見てもらい具体的プランの参考にしてもらいます。 演出家には役者の演技行動の参考に、役者には自分の出入りや演技エリアを、 照明家にはライトのあてる位置などの参考にしてもらいます。

●装置の製作

演出家との最終的な装置の確認ができれば、いよいよ装置の製作です。 舞台美術家にとってまず考えなければならないことは予算の問題です。予算内でいかに装置を造るか 舞台美術家はその点でも手腕を発揮しなければなりません。
装置を作るための木材や塗料など諸々の必要な材料を予算と相談しながらやらなければなりません。 もちろん製作スタッフの人件費も掛かります。そうした予算をクリアしながらデザイン設計図を 見つめ美術スタッフと装置の製作を一つ一つ進めて行きます。
しかし製作していく過程で、必ず何か問題にぶち当たります。 頭で描いていたようなセットの表現が思うように出来ないということがあります。 材料や塗料の材質がイメージに合わない事がよくあります。 その時は自ら材料屋に行く事もしばしば出てきます。いろいろ試行錯誤をしながら進んでいきます。

●搬入と仕込み

セットがやっと出来上がるといよいよ劇場に搬入し舞台にセッティング (仕込み)です。セットは搬入口のスペースに入るよう造ってありますが、時々搬入口にぶつけたり、 劇場の構造物にぶつけたりという事があります。搬入時はかなり慎重にやります。
仕込みには舞台美術家も立ち会います。大道具スタッフが舞台上にセットを建て込んでいく時に図面を見ながら 一つ一つ進めていきます。
セットが一応出来上がった段階で、舞台装置家は全体を点検します。パネルなどがしっかり留まっているかどうか、 開けたてをするドアや特に仕掛けの施してある部分はうまく動くかどうか確認します。 また塗料などが剥げ落ちていたりしていたら修正などをします。一通り見て大丈夫と確認できたら舞台装置は 一応完成です。

●舞台稽古

ステージに舞台装置が出来上がると、照明さんが照明の セッティングし、音響さんが効果の音調整をします。一応各セクションがセッティングが終わると 演出家を中心に役者が登場し、各パートパートごとのキッカケやタイミングの稽古をします。 それが終わると、ようやく舞台稽古が始まります。舞台稽古は本番と同じ条件で通し稽古をします。通し稽古は 役者をはじめ、照明、音響、衣装、大道具、小道具などそれぞれセクションが有機的かつ スムーズに進行するよう入念にチェックします。流れで不具合が生じれば演出家を中心に 打ち合わせをします。すべて流れが完成するといよいよ本番初日を迎えます。
舞台装置家は舞台装置に照明が弘光とあたり、その中で役者が生き生きと演じている 情景を見る時、いつも本当に苦労した甲斐があったと感じる瞬間です。